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相原実貴先生スペシャル1万字ロングインタビュー!! ( 2019/06/24 )

【前編】祝!『5時から9時まで』連載10周年&『ホットギミック』映画化特別企画!
相原実貴先生スペシャル1万字ロングインタビュー!!

潤子&星川編がクライマックスを迎えた『5時から9時まで』は、なんと今年で連載10周年!
さっらに、累計450万部を超える大ヒット作『ホットギミック』は6/28(金)から実写映画が公開!
今、大活躍中の相原先生に、作品やご本人の話をたーーーっぷりお聞きしちゃいました!
※インタビュー内容に「5時から9時まで」の『Cheese!』2019年8月号掲載分までの内容を含んでおります。未読の方はご注意ください。



Q 連載10周年を迎えて

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――連載10年目にして、ついに潤子と星川さんが落ち着きそうですね。今のお気持ちはいかがですか?

もう10年間なんですね。そう考えると感慨深いものがあります。ふたりを追い続けてくださった読者さんが「潤子も星川さんも成長したなぁ」と感じていただけたら嬉しい限りですね。最初はこんなこと言ってたのに、今じゃこうなったんだと。私としては、この展開はお互いが成長した証だと思っているんです。

――こうなると他のカップルの行方も気になってきますが、それは今後どのように描く予定ですか?

描く順番は未定ですけど、それぞれをゆっくりペースで描く予定です。潤子&星川のその後も含めて、今後の展開も見守っていただけたらと思います。


Q 凌の特別編について
――『Cheese!』2019年8月号では成田凌(ホットギミック主人公の兄)の特別編も掲載されましたね。

これは『ホットギミック』の映画公開に合わせた企画なんですけど、そもそも『5時から9時まで』に凌を登場させたのは本当に偶然だったんです。お寺を詳しく描くことに決まった時、ふとこのお寺に凌がいたら面白いんじゃないかと思いついたのがきっかけで、それまでは考えもしませんでした。ただ振り返ってみると、『ホットギミック』では凌がお寺に入った理由だったり、その時の彼の気持ちをしっかりと描く機会がなくて、それが少し心残りではあったんですね。だからちょっとだけですけど、こうしてまた凌を描く機会をいただけて、ひとりの作家としてとても幸せな気持ちですね。


Q 『5時から9時まで』誕生秘話
――『5時から9時まで』の誕生秘話についてお聞きします。まず、舞台が英会話スクールなのはどうしてですか?

私の姉が英会話スクールで講師をしているという、超単純な理由からです(笑)。以前からそこで巻き起こる恋愛沙汰とかトラブルとかの話を聞いていて、面白いなあとは思っていたんですよね。でもこれまでは高校生の恋愛をメインに描いてきたので、舞台設定として使うチャンスはなかったんです。でも今度の作品では「結婚」をテーマにした物語を描きたいと思って、そう考えたときに英会話スクールって最適だったんですよね。高校生から中年のおじさんまで、年齢も人種も関係なく誰でも登場させられるかもしれない。ある種カオスな場所から生まれてくるドラマに興味がありましたし、自分でも描いてみたいなと感じたんです。

――海外志向の強い潤子とお坊さんの星川という組み合わせはどうやって生まれたんですか?

潤子に関しては、自分の大学時代の友人のキャラを組み合わせてイメージしました。アメリカへの憧れが強いけど、結婚についてもいろいろと考えている子。もちろんそのままではないですが、「モデルは?」と聞かれたらその人ですね。アメリカへの憧れが強いからこそ、そこに思いっきり和風な男性をぶつけてみたらどうなるだろうと思い、それでお坊さんを描くことにしたんです。

――お坊さんを描きたいというよりも、潤子と真逆の存在として生まれたんですね。

そうですね。それまでとくにお坊さんという存在に馴染みがあった訳ではないんですけど、でも昔からお坊さんってセクシーでカッコいいなと思っていたんです。お坊さんが着ている法衣も好きですし。でも『Cheese!』の表紙で星川を描くにあたって、私としては法衣姿でいこうと思っていたんですけど、編集部から「星川はスーツ姿でお願いします」と言われて、「え? なんで? 法衣のほうがカッコいいのに」とちょっと凹みました(笑)。あまり周囲の共感は得られませんが、個人的にはお坊さんは「萌え」の対象ですね。

――仏教やお寺に関しては、連載を始めるにあたり改めて勉強されたんですか?

そうです。もともとお寺は好きだったんですけど、特別詳しい訳ではなかったので、連載を準備するにあたって宿坊に行ってみたり、いろいろなお寺を巡ったり、取材をさせていただいたりしました。ちょうどプライベートでも法事が重なったこともあり、それらをつぶさに観察しながら、「へぇ、こういう手順でやるんだ」と書き留めたりもしましたね。


Q 潤子&星川の最終決着
――潤子と星川という対照的なふたりがどのようにして惹かれあっていくのかが醍醐味ですが、結婚に至るまでの道筋はあらかじめ考えていたんですか?

いえいえ。最初にお話を考えた時には、ここまでの展開を描ききれると思ってませんでした。本来なら絶対に交わらないであろうふたりの恋愛を描くうえで、「くっつくの? くっつかないの?」っていうドキドキハラハラは描きたいと思っていたんですが、キャラクターたちが思いのほかイキイキと動いてくれたおかげで、思いの外二人の決着方向まで描けたかなと思います。

――最終的に「授かり婚」という形で決着を迎えたのも驚きでした。

潤子ってすごく強いようで優柔不断な面もあるから、彼女が腹をくくって星川の元へ嫁ぐには、もう妊娠するくらいの出来事がないと難しいだろうと思っていたんです。それもあって、彼女には双子の赤ちゃんを身ごもっていただくことに(笑)。


Q 群像劇になったわけは?190624_aiharaiv_02.jpg――潤子以外にも、百絵やゼクシィなど多くのカップルの恋愛模様を描いた理由はありますか?

これはもともと考えていて、3人の結婚適齢期の女性たちの、それぞれまったく異なる恋愛の話を描きたいと思っていたんです。ただ最初の段階ではそこまで連載が続くかどうかも分からなかったので、どこまで深掘りできるのかなと思いながら連載を続けていました。結果的に、最初に思い描いていた3人の話を描きたかったところはしっかりと描くことができそうで、嬉しいです。

――とくに百絵とアーサーのカップルは読者人気が高いですよね。

そうですね。私の感覚的には、どっぷりとまんが好きな人は百絵&アーサー、もう少しライトな層は潤子&星川のほうが好みなのかなと感じています。


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――ちなみに百絵のオタク的な要素は、相原先生にも共通している部分がありますか?

私自身ももちろん入っていますが、百絵に関してはアシスタントさんたちからもらっている部分の方が大きいです。おじいさん好きとかショタ好きとか、みんないろいろな好みがあって、私の仕事場は「これ、まんがにしたら絶対に面白いよ」って思うことの宝庫なんです(笑)。

――とくにコラボカフェ(第12巻)の描写などはかなり具体的でした。

これはコラボカフェがちょうど流行りはじめたころに描いたものですね。私も行ったことがあって、「こんな世界があるのか!」と感激しちゃって、これはまんがにしないわけにはいかないぞと(笑)。


Q 連載10年のターニングポイント
――連載10周年を振り返ってみて、ストーリー上のターニングポイントになったのはどこですか?

第7巻で、潤子と星川の気持ちが初めて通じ合って結ばれたシーンかな、と。連載開始時はここまでを描くのが目標だったので、達成感がありました。それ以前にも、「星川のことが嫌いじゃないかも? からの裏切りで思わず三嶋と浮気してしまう」という展開は絶対に描きたかったので、それが描けた時には「やった!」とひとりで小躍りしたのも印象深いです。でもそこからどうしたら星川ともう一度向き合えるのかなという点はけっこう悩みましたし、頑張って描いたつもりなので、それも含めて第7巻が描けた際の喜びはひとしおでした。


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――潤子は割と平気で浮気をしてしまう主人公ですが、それが読者さんから共感を得られているというのも、本作の面白いところだと思います。

いや、でも「やっぱり潤子は嫌い」と言う方もいらっしゃると思います。特に連載初期のころはよく「ビッチ」呼ばわりされていましたから(笑)。今はもう少し受け入れてくださる方が増えたかもしれませんが、でもやっぱりダメな人はいるとは思います。私としては、これが高校生だったら主人公としてアウトかなとは思うんですけど、もういい大人ですし、普通の人ならだいたい何人かと付き合ってから結婚に至ることもままあります。だからまあセーフだろうと思っているんです。それに何より、複数の男性と関係を持ったとしてもそれでも可愛い女性を描きたかったので、潤子というキャラクターは好きですね。


Q キャラクターにモデルはいる?
――毛利(以下ゼクシィ)のような、小狡くて計算高い女性もすごくリアルですよね。身近にモデルがいるんですか?

あのまんまの人はいませんが、じつは似ている人はいます。ふだんはすごくいい子なんですけど、恋愛が絡むと途端に周囲を敵視するモードに入る子で、いつも面白いなあと思っていたんです。いつかまんがで描いてみたいと狙っていたんですけど、おそらく本人は気づいていないと思います(笑)。

――ゼクシィのように、キャラクターにはそれぞれモデルがいるんですか?

キャラクターを作ったあとで、気が付けばあの人に似てるなと思うことはありますけど、ハッキリ誰かをモデルにしてキャラクターを作るということはないですね。基本的にはいろいろな人の面白いところを集めたり掛け合わせたり増幅させたりしているので、「キャラクター=この人」っていうことはないです。まあ、さっきお話ししたゼクシィだけはちょっと別かもしれませんけど(笑)。


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Q 雰囲気は海外ドラマ?
――『5時から9時まで』は雰囲気も都会的で洗練されている印象を受けます。なにか意識されたことはありますか?

そう感じていただけたならとても嬉しいのですが、おそらく"たまたま"です(笑)。海外ドラマや洋画が好きなので、無意識にそういう演出や世界観の影響を受けているかもとは思いますけど、とくに意識して○○っぽくしようとか、海外ドラマ風にしようとかは考えたことがなくて。だからやっぱり"たまたま"ですね。

――海外ドラマの雰囲気に加え、どことなく90年代のトレンディドラマっぽい雰囲気も感じますね。

私自身がトレンディドラマを見て育ってきましたから、どれだけ隠そうとしてもどこかで滲み出ちゃうのかもしれませんね、圧倒的昭和感が(笑)。


Q ストーリーの作り方は?
――相原先生は、毎話のストーリーはどのように作られていますか?

ネーム(コマを割り、セリフや動きを決めていく作業)に入る前に、「今回はこういうお話にするつもりです」と担当さんにざっくりと伝えてはいるんですけど、細かい内容はキャラクターたちが動いてくれないことには決められないので、それをひたすらに待ちます。その"動き待ち"の時間はけっこう長いです。動き始めてさえくれれば速いんですが、そこまでは毎回苦労しますし、編集部さんにもギリギリまで待ってもらうなど、迷惑をおかけしています。いざ描き始めてみても、その後が全然続かないこともあって、その時は「彼らが言いたいことはこれじゃないんだな」と、いったんゼロに戻すことも多々あります。

――最近で言うと、どんな部分で悩みましたか?

毎回悩んではいるんですけど、そうですねえ。例えば『Cheese!』2019年6月号と7月号で潤子と星川の最終的な決着を描いたわけですけど、最初は全くまとまらなかったんです。星川はお坊さんですから、跡継ぎの話はもちろん家の細々としたしきたりだったりと、結婚に付随して描かないといけない事柄が多すぎて、それらをどう組み合わせてもうまくいかない。何よりふたりの気持ちの結びつきをメインに描かなきゃいけないのに、そこからかけ離れたところばかり描写していて、本来あるべき少女まんがの姿から離れていってしまっていて。そこで思い切って、ネームの時点で盛り込んでいた付随部分をバッサリと切ったんです。完全にふたりの世界だけを描こうと割り切った結果、自分としてはすごく納得できる形になりました。お寺やお坊さんに詳しい人からすると細かいツッコミがいっぱい入るかもしれませんけど(笑)、今でもこれで良かったと思っています。

――お話にあがった潤子と星川の決着についてですが、京都に行くのか仕事は続けるのかなどの答えについてはいつくらいから決めていたんですか?

最終的にこうしようというのは、自分の中では前から決めてはいたんですが、果たしてそれでいいのかは最後の最後まで悩みました。キャラクターたちの気持ちはもちろんですが、作品的に盛り上がるかとか、読者さんがそれを望んでいるのかとか、いろいろなことがふわふわと漂っていましたね。そういったものを総合した上で、描かないといけないタイミングで何が降りてくるのか、降ろしてくるのかっていうのがネームの醍醐味でもあるのかなと思っています。だから今回もすっごく悩んだということだけは間違いないです。

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