トップ > ニュース > 【後編】祝!『5時から9時まで』連載10周年&『ホットギミック』映画化特別企画! 相原実貴先生スペシャル1万字ロングインタビュー!! (2019/06/24)

【後編】祝!『5時から9時まで』連載10周年&『ホットギミック』映画化特別企画! 相原実貴先生スペシャル1万字ロングインタビュー!!

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※インタビュー内容に「5時から9時まで」の『Cheese!』2019年8月号掲載分までの内容を含んでおります。未読の方はご注意ください。



Q 相原先生の子供時代は?
――ここからは相原先生がプロデビューするまでのお話を伺っていきます。子供時代にハマったまんがはなんですか?

じつは両親が厳しくてまんがを買わせてくれなかったので、小学校三年生まではまったく読んだ記憶がないんです。小学四年生になってやっと『なかよし』を買ってもいいという許可が出て、そこから私のまんが体験が始まりました。最初に買ったコミックスは当時『なかよし』で連載していた『キャンディ・キャンディ』で、アンソニーが落馬して命を落としたシーンに衝撃を受けて、もうその後は読みたくなかったくらい(笑)。そこから中学に上がるまではいろいろな少女まんがを読んで、中学生になったら今度は少年まんがにハマっていきました。最初は『キャプテン翼』から入り、さらに不良が活躍する群像劇が好きになり、『湘南純愛組!』や『湘南爆走族』とかに夢中になっていました。

――少年まんがのどんなところにハマったんですか?

私の場合、ストーリーとかは割とどうでもよくて(笑)、とにかくキャラクター命なんです。スポーツまんがとかヤンキーまんがってだいたいが群像劇なので、自然とお気に入りのキャラクターができるじゃないですか。それが好きだったんだと思います。

――自分でまんがを書くようになったのはいつからですか?

ちゃんとコマを割って「まんが」として描いたのは高校生になってからです。中学生の時にはコバルト文庫が流行っていたので、それを真似て自分で小説を書いて、挿絵のイラストも自分で描いて、それを仲の良い友達だけに見せたりもしていました。その子たちから続編を望まれたら続きを書くといった感じで。

――まんがではなく小説が最初の創作物だったんですね。内容は覚えていますか?

ジャンルで言えば「同居モノ」になるんですかね。主人公がおじさんの家の管理を任されて、そこになぜか4人の男子が集まってきて主人公と共同生活を送るっていう設定だったと思います。じつはその時に作った4人のキャラクターのひとりが「小田切梓」という名前で、『ホットギミック』の梓と同姓同名なんです。もちろんビジュアルや設定は違うんですけど、モデルでひねくれ者でっていう基本的な部分はそのままで。今でも梓を見ると、初めて作った4人のキャラクターたちのことを思い出します。


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――高校生時代はどんなまんがを描いていましたか?

高校生の時に描いたのはオリジナルではなく、いわゆるアニパロですね。同人誌を作っている人と知り合いになり、その流れで自分でも作るようになっていきました。サンライズの『鎧伝サムライトルーパー』というアニメが好きで、それを描いてましたね。とは言えそれまで一度も「まんが」という形式では描いたことがなかったので、まんがの描き方本を買ってきて、それを読みながらコマを割ってペン入れして仕上げもしてと、全部ひとりで完成させました。田舎に住んでいたのでコミケなどには行けなかったんですけど、いい思い出です。

――その後、大学入学とともに上京されるんですね。

そうです。大学在学中はずっと同人活動をしていましたね。運良く出版社さんの出すアンソロジーに参加させていただく機会があり、さらにそれが少し売れたこともあって「もしかしたら私、まんがで食べていけるかもしれない!?」って勘違いをしてしまったのが運のツキと言うか(笑)。プロのまんが家というものを意識したのはその時が最初です。

――そこからどうやってプロとしてデビューされたんですか?


すでに就職活動の時期だったので、記念と思って小学館さんに持ち込みをしてみたんです。人生で初めて31ページのオリジナルまんがを描いて、これで箸にも棒にもかからなければ大人しく就職しようと思っていたんですけど、これも幸運なことに担当者さんが付いてくださることになったんです。

――それまで投稿や持ち込みはしたことがなかったんですね。

はい。そもそもプロになるのは無理というか、考えたこともなかったですね。それに同人誌の場合だとせいぜい数ページ描けばいいんですけど、投稿や持ち込みとなると最低でも20ページとか30ページとか、枚数の規定があるじゃないですか。オリジナルでそんなに長いページを作ったこともないですし、自分にはとても描けないとも思っていたんです。

――しかし見事に描きあげて、しかも担当さんまで付いたと。

はい。そこで就職かまんが家か、決断を迫られました。結局、プロのまんが家の道を選ぶんですが、当時は3年やって上手くいかなかったら潔くやめようと思っていました。

――就職した場合はどんな業界に進むつもりだったんですか?

金融系です。ただ、積極的に金融業界で働きたいというよりは、手当とか福利厚生とかがいちばん充実していたのがたまたま金融業界だったんですよ。当時はまだバブル期だったこともあって、いくつかの証券会社さんからすでに内定をもらっていました。

――そこからまんが家への道を選ぶのは、まさに究極の決断ですね。

今考えると、自分でも思い切ったなと思います(笑)。


Q デビューから『ホットギミック』誕生まで
――1991年にデビューして、2000年の『ホットギミック』まで約9年間。そのあいだも『東京少年少女』や『SO BAD!』など、コンスタントに連載作を生み出していますね。

ありがたいことに、これまであまり途切れることはなく描かせていただけていますね。でも自分ではいつも首の皮一枚というか、ギリギリで連載枠をもらっているという感覚で、それは今もあまり変わりません。

――え? 今でもギリギリな感覚なんですか?

はい。『5時から9時まで』や『ホットギミック』は本当に偶然映像化していただけただけだと思っていますから。たまたまラッキーだったのかなとは思います。

――そうなんですね。そして2000年から『ホットギミック』が始まりますが、そもそも「社宅」というアイデアはどこから生まれたんですか?

これもすごく単純で、当時私が住んでいた地域に大きなマンションができたんです。それでよくよく聞いてみたら、そのマンションはとある大企業の社宅で、身分の高い人から順に高層階に入居すると。それを聞いた瞬間に「萌える!」って思って(笑)。そこから一気に想像が膨らんで、社宅という舞台設定でまんがが描きたいと思ったんです。

――相原先生にとって社宅は「萌え」の対象なんですね。

めっちゃ萌えますね。客観的に見ればものすごく狭い世界でのみ通用するヒエラルキーなのに、住人たちはそれにかなり縛られている感じとかが好きですね。自分の子供時代を思い返してみても、そう言えばそれまでコーラスを習っていた母が、急にお菓子教室に通うようになったことがあって。今思うと、それって父の上司が変わったんだなとか。父も割と古い体質の大企業に勤めていたので、部下の妻は上司の妻の趣味に付き合わないといけないんだとか。いや、確かめてないので本当のことは分かりませんよ(笑)。とにかく私としては、その設定を利用して「ご近所版ロミオとジュリエット」が描きたいと思い、それでお話の骨格を作り上げていきました。


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――『ホットギミック』は亮輝と梓という二人の男子の印象が作中でガラリと逆転していくのが衝撃でした。

それは最初から狙っていたことなので、そう言っていただけると嬉しいです。ただ、もともとお話の中心はあくまで主人公の初(はつみ)と亮輝のふたりの恋愛なので、梓に関しては、言い方は悪いですけど「当て馬」みがあるというか(笑)、そこまで深く描写する予定ではなかったんです。何よりこの亮輝というキャラクターを描きたかったというのがまず最初にあるんです。

――亮輝のどんなところを描きたかったんですか?

亮輝って、いわゆるメガネのガリ勉君なので、それまでの少女まんがではなかなか読者さんのハートを掴むことができないタイプのキャラクターだったんです。主人公の相手はだいたい黒髪でシュッとした子とか、もしくはちょっと不良で色んな意味で経験豊富っぽかったり。でも私はそこからちょっと外れたいと思っていて、それでメガネのガリ勉な亮輝が、最初はすごい嫌われ者なんだけど、描写していくほどだんだんと面白くなっていくということを描きたかったんです。

――これまでにないヒーロー像を描きたかったんですね。

多くは無かったんじゃないかと。「こんな奴大っ嫌い!」から「意外といい奴?」、「もしかして可愛い!?」という変化を、主人公の初(はつみ)といっしょに読者さんにも共感して欲しいなと思いながら描いていました。

――なるほど。でもそこに至る前の、とくに梓が豹変する場面などは多くの読者にとってはショックでしたね。

それは申し訳なかったです(笑)。でも私としては最初からそのシーンが描きたくてたまらなかったので、梓は最初からこれを狙ってたんだから仕方ないよと思いつつ、描いている時はノリノリでした。ただ結果としてその後に梓の複雑なバックボーンまで描くことができたので、梓が薄い感じのキャラで終わらずに良かったなと思います。


Q 『ホットギミック』の映画化
――その『ホットギミック』ですが、いよいよ6月28日に映画が公開されますね。

つい先日拝見させていただいたんですが、自分が描いた作品だということを忘れてしまうくらいすごくスタイリッシュで綺麗な映像で、月並みな表現ですけど、感動しました。

――映画化においては、原作者として何か要望を出されたんですか?

いえ。監督の山戸(結希)さんが作品についてとても確固たるイメージを持っていらっしゃったので、完全にお任せしました。そもそもまんがの映像化の場合、原作というのはあくまで素材ですから、最終的にどう料理してくださっても構わないと思っているんです。ましてや『ホットギミック』はもうかなり昔に完結している作品ですから、「煮るなり焼くなり好きにしてください」とお伝えしました。結果として私の解釈とは異なる部分があったとしても、映画は山戸監督の視点を通じて描かれた新しい『ホットギミック』ですから、そこはむしろ私にとっても新鮮な一面が見れて嬉しいですし、なるほど監督はこう感じたんだなということも分かってすごく楽しかったです。いろいろな感性や受け取り方があっていいと思っています。


Q 好きなキャラクターは?
――ご自身の作品に登場するキャラクターで、とくに好きなキャラクターは誰ですか?

好きというか、「もし生まれ変わるならこの人になりたい」っていう意味では『5時から9時まで』の蜂屋蓮司ですね。ああいうモテモテ男子になって、女の子をとっかえひっかえして遊びたいです(笑)。「本当にまんがの世界のキャラだなあ」と思いながらも、私のモテ願望を満たしてくれるので、描いていてとても楽しいキャラクターです。


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――『ホットギミック』では誰かいますか?

これも「もし自分がなれるなら」という視点で選ぶと、風間という凌と同居している男の子。彼は距離感や立ち位置が絶妙でいいですよね。私にとっては関西弁て大変セクシーに思われるので好きです。


Q 相原作品の恋敵について
――『ホットギミック』の梓や『5時から9時まで』のゼクシィなど、相原作品に登場する恋敵役キャラクターは決してただの「悪」ではないのも特徴ですね。

これは現実世界でもそうだと思うんですけど、自分にとってはすごく嫌な人だったとしても、その人が属する別のコミニュティではすごく良い人だったりすることってよくあるじゃないですか。人間ってそういうものだなと感じているので、そういう多面的な部分をまんがでも出していけたら良いなとは意識していますね。

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Q どうなるか読めないハラハラ感
――『5時から9時まで』では潤子と星川がくっ付くのかハラハラしましたし、『ホットギミック』も最後までどうなるか読めない作品でした。

赤い糸で結ばれた運命のふたりを延々と描くっていうのが、私自身はどうにも苦手なんです。誰と誰がくっ付くのかが最後まで分からないような物語が好きなので、自分の作品にもそれが反映されているんだと思います。とは言えそれを狙って演出するのは難しいので、やっぱりキャラクターありきということにはなります。キャラクターがうまいことハラハラできる方向に動いてくれるかどうかが勝負なのかなと思います。


Q オラオラ系男子が好き?
――『ホットギミック』の亮輝や『5時から9時まで』の星川など、相原先生の作品はちょっと強引なオラオラ系男子が印象的です。これは意識して描かれているんですか?

私の好みというよりは、単純に描きやすいという理由で、キャラクターが動いてくれやすいんです。最近、映画化の企画でかなり久しぶりに亮輝を描いたんですが、ほとんど悩まずに動いてくれて、やっぱりキャラが立ってるなと再確認しました。逆に私自身の好みで言えば、むしろ梓のような何を考えているか分からないキャラクターのほうが好きなんですけど、いざ自分が描くとなるとなかなか動いてくれないし、何よりカッコよく描けないんですよね。本当はもっともっとカッコいいはずなのに、それを捉えられないという葛藤が大きくて、どうしても苦手意識がありますね。


Q 今でも少女まんがは読む?
――プロになってから、少女まんがは読んでいますか?

流行の絵柄を勉強するために見ることはありますが、それ以外ではあえて避けるようにしています。と言うのも、無意識に影響を受けてしまって、それに気づかず模倣しちゃったらどうしようという恐怖があるんですよ。そもそも読んでいなければ、たとえセリフとかがかぶっちゃったとしても、「絶対にパクリじゃないです!」って胸を張って言えるじゃないですか。

――ではまんが作品全般を避けているんですか?

いえ、同ジャンルでなければいいかなという自分ルールなので(笑)、少年まんがはよく読みます。最近ハマったものだと『ジョジョの奇妙な冒険』、『弱虫ペダル』、『ダイヤのA』、『ハイキュー!!』、『ジャイアントキリング』などです。

――スポーツ作品が多いですね。

キャラクターが成長していく群像劇が好きですね。学生時代はヤンキーまんがが好きでしたけど、今はそれがスポーツになっただけで、根本の好みは昔からあまり変わっていないかもしれませんね。

――でも中学生時代も『キャプテン翼』は好きだったんですよね。

ああ、そうですね。じゃあまったく変わっていないです(笑)。

――それぞれにお気に入りのキャラクターがいるんですか?

もちろんいます。『キャプテン翼』なら若嶋津、『ジョジョの奇妙な冒険』なら第5部のフーゴ、『弱虫ペダル』なら鳴子章吉といった具合ですね。とくに最近は『ジョジョの奇妙な冒険』にハマっていて、つい先日もコラボカフェに行ってきたばかりなんです。今日着ているTシャツもフーゴが描かれたものですし、このTシャツをどうやったら違和感なく着こなせるか、昨日一晩かけてコーディネートを考えましたから(笑)。

――熱量がすごいですね。

大好きですねー。最近のいちばんの楽しみは、原稿中の息抜きに『ジョジョの奇妙な冒険』を読むことですから(笑)。


Q リフレッシュ法
――ネームが行き詰まった際は、どんなことをしてリフレッシュしますか?

うーん、何をしていいか分からないです。行き詰まっているときは何をしていても気がかりで手に付かないですし、無理に寝ようとしても「ネームができなくてごめんなさい!」って謝ってる夢を見るので熟睡もできません(笑)。その代わり、急にポンと閃いたときには一瞬だけですけど「私、天才じゃない!?」って思う瞬間もあります。まあ、あとで冷静に読み返したら「なんじゃこれ?」ってなるときもあるんですけど(笑)。とにかくネーム中はそんなことの繰り返しなので、かなりの地獄ではあるんですけど、私の場合はひたすら我慢ですね。

――原稿後のリフレッシュ法は?

映画はよく観に行きます。マーベルヒーローが好きなのと、あとは地味な洋画の単館上映作品とかもよく観ます。海外ドラマも好きで、最近では『ゲーム・オブ・スローンズ』の最終章を一気観して、しばらく魂が抜けました(笑)。


Q 挑戦したい題材
――今後の話になりますが、いつか描いてみたい題材やテーマはありますか?

もともとギリシャ神話やグリム童話が好きなので、そういったものを自分で描いたらどうなるんだろうと興味があります。好きなエピソードの中には、童話として描かれているけど、どう考えても恋愛ストーリーだろうと思うものもあるので、いつかそういうものを自分なりにアレンジして描いてみたいですね。あと題材というより形式なのですが、4コマまんがも描いてみたいです。『5時から9時まで』ではコミックスの表紙で描いていたりもするんですが、いつかああいう日常系の作品を4コマで連載してみたいです。


Q 絵のこだわりは?
――潤子のような気が強く能動的な主人公の表情をイキイキと描ける少女まんが家さんは少ないと思いますが、絵に対するこだわりはありますか?

ありがとうございます。そんなことを言っていただけたのは初めてです(笑)。でもじつは私、自分の絵があまり好きではない、というよりも「私はなんて下手くそなんだ」といつも思っちゃうんです。私の絵柄が好きと言ってくださる方々には本当に申し訳ないというか、ごめんなさいっていう感じなんですけど(笑)。でも自分の描いた男性キャラをカッコいいと思ったことは一度もないんですね。心からカッコいいと思える男性キャラを描きたいという気持ちだけでこの仕事を続けているんですけど、いまだに満足のいくキャラクターは描けたことがないです。逆に言えば、もし心から満足のいくキャラクターや絵を描けた時が来たのなら、それはもうまんがを描くことをやめる時かもしれません。それくらいまんがって難しいなと思いますし、だからこそ追求のしがいもあるのかなと思っています。



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